時にガーネットはダイヤモンドに抱えられて地表に出てきます。
赤くて可愛らしいその石は悠然とダイヤモンドの結晶の中に潜り込んでいるのです。
不純物や傷がなければないほど価値が上がるダイヤモンドの中に堂々と。
ダイヤモンドの鉱脈と一緒に見つかることが多いガーネットは時折ダイヤモンドの中に取り込まれることがあるのです。
そして、ダイヤモンドの鉱脈を見つける道しるべ的な存在です。
世界的な様々な文献にも登場するガーネットは日本・アメリカ・イギリス・フランスの1月の誕生石でもあります。
この記事でわかること
1.ガーネットの指輪の価値について
1月の誕生石として知られているガーネットは実は、ひとつの宝石の名称ではなく、同じ結晶構造をもつ鉱物の総称で、珪酸塩鉱物の鉱物グループ名です。
かつて最も一般的だったのがアルマンダイトガーネットという赤い石で、日本のガーネット市場のほとんどを占めていたために「ガーネット=赤い色の宝石」というイメージが強いですね。
でも実際には構成元素の違いで様々な色や光沢が生まれ、青色を除く赤からオレンジ、黄色、緑まで多彩なカラーバリエーションがあります。
「ガーネット」グループは宝石界の一大勢力で、18~19世紀のヨーロッパの宝石店ではショーケースの半分を様々なガーネットが占めたといいます。
古くからジュエリーに使用されてきた赤系のガーネットは産出量、流通量も多く、手軽に入手できるというイメージが定着しています。
新たにグリーンやオレンジ系など多彩な色のガーネットが発見・採掘されて、同じガーネットでも人気に差が出てきています。
現在では20以上の種類以上のガーネットがあり、それぞれの種類や品質、稀少性によって価格も異なり、10~100倍と大きな開きがでています。
また、ガーネットは自然に生み出される結晶が12面体や24面体など整った形状になっており、そのままでも十分に美しいのも特徴です。
できる限り天然に近い宝石を楽しみたいという方にはおすすめです。
2.ガーネットの種類について
ガーネットは世界では7種類(アルマンダイト、ロードライト、パイロープ、スペサルティン、グロッシュラーライト、アンドラダイト、ウバロバイト)に分類されていますが、日本では5種類(デマントイド、グリーン、スペサルティン、ロードライト、アルマンダイト)に分類されています。
それぞれ価格も大きく異なり、デマントイドガーネット、グリーンガーネット、スペサルティンガーネットは特に価値が高い種類です。
他にも特徴あるガーネットとして、糖蜜状組織と切り株状のインクルージョン(内包物)で有名な「ヘソナイトガーネット」や、アレキサンドライトのように光源の種類によって色を変える「カラーチェンジガーネット」は、コレクターの間でも人気です。
地球内部には未知のガーネットがまだまだ眠っていて、これから産出されることもあるかもしれませんね。
2-1【デマントイドガーネット】
産出量が少なく稀少性が高いデマントイドガーネットはガーネットの中でもダントツに高価な石です。
濃い緑色でテリがある良質のものはエメラルドより価格が高いこともあるそう。
黄色味を帯びたグリーンで、1860年代にロシアのウラル山脈で発見され、ダイヤも凌ぐその光の分散効果から「ダイヤモンドのような」という意味の名前がつけられています。
2-2【グリーンガーネット】
近年人気のグリーンガーネット。
透明度が高く、美しいグリーンの良質なものは特に高価で、赤色系のガーネットの数倍以上の価格がつくこともあります。
なかでも、1960年代にケニアのツァボ国立公園で発見され、その場所にちなんで「ツァボライト」と命名されたグリーンガーネットは特に良質で、エメラルドに匹敵するほどの人気があります。
2-3【スペサルティンガーネット】
スペサルティンガーネットは、赤系統のガーネットに属しますが、産地の地質によって様々な色合いがあります。
赤色を帯びたオレンジ、ブラウンに近い褐色を帯びた赤、紫味を帯びた赤に近いものなど、色の幅が広いのが特徴です。
特に果実のマンダリンのようなオレンジ色が鮮やかなものを「マンダリンガーネット」として区別して呼ぶこともあります。
2-4【ロードライトガーネット】
ロードライトとは「バラの花のような」という意味、それも深紅のバラのイメージで、ロードライトガーネットは、やや紫がかった赤色です。
19世紀末に発見されたばかりで年々人気が増しており、透明度が高く、濃すぎず薄すぎない適度なカラーが特に好まれます。
なかでも、紫が濃く果物のグレープのような色合いのものは「グレープガーネット」と呼ばれ大変人気です。
2-5【アルマンダイトガーネット】
少し影や褐色味のあるワインレッドが特徴で、日本での流通量も多く、単にガーネットと呼ぶ時は、このアルマンダイトガーネットを指すケースが多いです。
3.ガーネットの主な産地
ガーネットの産地は世界中に広く分布しています。
代表的な赤いガーネットは、主にブラジルやタンザニアなどで産出されています。
また、マダガスカルは良質なカラーチェンジガーネットの産地です。
他にも、インドやスリランカ、南アフリカ、アメリカ、オーストラリアなどがガーネットの産地として有名です。
4.ガーネットについてのあれこれ
名前の起源を、ラテン語で種子の意味のgranatusに由来するとされるガーネット。
日本では、ざくろに似ていることから「柘榴石」と呼ばれています。
ガーネットは、古くから世界各地で「神聖な石」として崇められ大切に扱われてきました。
旧約聖書の中の物語である「ノアの方舟」では、唯一の灯りとして闇夜を照らし、船の行く先を示したという伝説もあります。
古代エジプト時代にはすでに発見されていて、中世の十字軍の兵士たちは、護符としてガーネットを身に着けていました。
また、古代ローマの印象指輪として、重要な書類の封蝋(ふうろう)のためにガーネットのインタリオが使用されていました。
ガーネットは、中世の聖職者や貴族にも好まれ、アンティークジュエリーでもよく見かける歴史ある石なのです。
5.ガーネットの石言葉
ガーネットの石言葉は、「真実」「友愛」「忠実」「貞操」「勝利」などがあります。
ガーネットは「実りの象徴」とされ、「勝利の石」とも言われています。
目標に向かい、忍耐力と精神力を養い、コツコツと積み上げてきた努力の成果を実らせて、成功へと導いてくれると言われるガーネット、叶えたい夢や目標がある人にはおすすめです。
また、この実りの効果は、恋の成就にも力を貸してくれます。
古い伝承では、大切な人との別れの際に、再会の誓いとしてガーネットを贈り合い友情の印とするなど、深い絆を表現していました。
欧米では、変わらぬ愛の証に結婚2周年と18周年の結婚記念日にガーネットを贈るそうです。
ドイツの文豪ゲーテの若い恋人が、ゲーテへの変わらぬ思いを胸に、常にガーネットを身に着けていたことはよく知られています。
6.保存方法や注意点などのアドバイス
ガーネットは水にも紫外線にも強く、日常で身に着けるには退色の恐れもありませんが、身に着けた後は、柔らかいクロスや布などで軽く拭いてからジュエリーケースにしまいましょう。
流水で洗う場合には、水分をしっかりと拭き取ってから自然乾燥で乾かしてください。
ガーネットは、モース硬度で6.5~7.5と高い範囲にあります。比較的、傷がつきにくい宝石ですが、ジュエリーケース内では、ダイヤモンド、ルビー、サファイアなどの、より硬度が高い石とぶつからないように保管しましょう。
日頃のメンテナンスを心がけ、お気に入りのジュエリーと末永くお過ごしくださいね。